ネアンデルタールの知能はホモ・サピエンスと大差なかった？

 現生人類（ホモ・サピエンス）をして、近縁種であるネアンデルタール人などとの生存競争に勝ち抜かせ、地球上“最強”の種となしえたのは現生人類がもつDNAのどの部分だろう？

このような疑問に対して、ブラジルの科学者たちは「極わずか」、または「まったくない可能性がある」と答えている。
ブラジルで最近開催された遺伝子学会の席上、南リオ・グランデ州連邦大学の調査チームは、知能に関する人間のゲノムの調査結果を発表。

調査チームは現生人類のとネアンデルタール人およびデニソワ人（2008年にロシア・シベリアのデニソワ洞窟で発見された現生人類と共通の祖先をもつ、4万年前の人類） のゲノムの差を比較。

ネアンデルタール人の知能はホモ・サピエンスと大差なかった？

「その結果は差は“ゼロ”か“極わずか”なものと判明した。」と同大学調査チームの研究員であり遺伝学者であるマリア・バルトリーニ博士は言っている。

「この僅差は、ネアンデルタール人やデニソワ人などは、ホモ・サピエンスに比べて能力的にも大きな差がなかったということを示していますそしてそれは認識能力も含みます。したがって、これまで考えられて来たように、認識能力が劣っていたためにこれらの種は絶滅したという説とはまったく反するものです」とバルトリーニ調査員は述べている。

今回の調査レポートはAmerican Journal of Human Biology誌8月1日ヴァネッサ・パイション－コルレスの名前で記載されている。

調査チームの研究は、同誌にこれまでに発表されて来たネアンデルタール人およびデニソワ人のゲノム配列によって大きな進展を見せた。どうチームは認識能力と知能に密接な関係がある162のゲノムの研究に集中した。

　研究チームはまず、ネアンデルタール人、デニソワ人、ホモ・サピエンス人の3種のヒト科に共通し、しかもチンパンジーも持っているゲノムの比較を行った。その意図は、これらの3種ヒト科がもつ共通のゲノムの“祖先”を特定するためである。専門家たちは、チンパンジーの認識能力は、もっとも人類の祖先に近いものだと考えているからである。

比較による結果で、我々ホモ・サピエンスも、すでに滅亡したネアンデルタール人、それにデニソワ人もこの“祖先”がもっていた、ある“特長ゲノム”の変化パターンの痕跡を留めていることが判明したのだ。その特長とは、“ニューロンと手先の器用さ”などをつかさどるゲノムであった。

シベリアのデニソワ洞窟での発掘もよう



デニソワ洞窟で発見された4万年前の少女の歯の化石

環境と文化

ヒト科3種の手先の器用さ、認識能力などではほとんど差がないとすると、では、なぜホモ・サピエンスだけが生き残ったのか、という疑問が出る？

その疑問に対する回答の一つは、これらの滅亡人種－ネアンデルタール人やデニソワ人－のごく一部はホモ・サピエンスと交雑し、その遺伝子を現在の我々の中に残している。

そして、もう一つの回答は、「環境および文化的な要素がその“存続”と“滅亡”の明暗を分けたのかも知れない」とバルトリーニ氏は述べ、「現生人類は、多くの場所で石器を何千年にもわたって使い続けてきた、ということもわかっています。その理由は、地理的に隔離された場所に住んでいて、“革新”を行うために必要な“刺激”がなかったからです」と推論している。

しかし、考古学者の中には、ネアンデルタール人の人口密度は低かったので、よけいに隔離された場所に住むことになり、氷河期の終わりの気候の変化にうまく適応できなかったのが、滅亡につながったのではないか、と指摘するものもいる。

南リオ・グランデ州連邦大学の調査チームは、もし、ネアンデルタール人やデニソワ人が、氷河期末期の気候の変化にうまく適応し、生存することができていた なら、その後1万年にわたって続いた気候安定期に、農業などをおぼえ、独自の文明を興隆させたであろうと結論づけている。

タグ：人類の進化　ネアンデルタール人　ホモ・サピエンス　デニソワ人

コメント 2

知能は殆ど差は無いけれども、
『環境』および『文化的な要』がその“存続”と“滅亡”の明暗を分けたのかも・・・
現代社会でも同じ事が言えるのだと思います。
育つための、暮らしていくための、色々な『環境』
そこ！なんですよね。
by カリメロ (2013-11-30 09:03) 

☆カリメロさん、そうですね。ある種が生き残るためには、
　知能や環境適応だけでは不十分で、ライバルとの生存競争とか
　どれだけ種を増やせるか、などの大きな問題があると思います。
　考えてみれば、人類だって核戦争やウイルスで滅亡するリスクが
あるのですからね...


by Loby-M (2013-12-09 23:41)