新型ビジネスジェット レガシー 500 [サイエンス]

エンブラエル レガシー500

エンブラエルが6年の歳月と7億5千万ドルをかけて開発した新型ビジネスジェット、Legacy500が先週、初フライトを無事成功させました。 エンブラエルと言っても知らない人も多いと思いますが、売上高85億ドル(約6400億円)を誇る、世界第3位[ぴかぴか(新しい)]の航空機メーカーです。


エンブラエルの最新型ビジネスジェット レガシー500 (ファーストフライト) legacy-500ff.jpg



 

レガシー500ファーストフライトの動画



レガシー500のスペック

 航続距離:5556Km
 最高巡航速度:マッハ0.82(1012 km/h
 巡航高度:43,000フィート
 最高高度:45,000フィート
 全長:20.52m
 全幅:20.25m
 全高:6.74m
 航続距離:5.556 km(パイロット2名+乗客4人時)
 必要離陸滑走路長:1403m
 座席数:パイロット席2、キャビン席8~12
 キャビン高:1.82m
 キャビン幅:2.08m
 キャビン長:
 荷室容量:4.24立方メートル


レガシー500 一機あたりの価格は1千600万ドルから2千万ドル(約1億3千万円~1億6千万円)。
ちなみに、レガシーは中型ビジネスジェット(エグゼキュティブジェトとも呼ばれる)の、Game Changer(物事の流れを一気に変えてしまうもの)として開発されただけに、エンブラエルの意気込みも並外れたものがあり、最新の航空テクノロジーをふんだんに導入しています。たとえば、軍用機(戦闘機)などではすでに“常識”ともなっている、「フライバイワイヤ」方式、つまり操縦桿に代わってコントロールステイックによって操舵を行うシステムを取り入れているほか、管理系統はすべてをデジタル化しています。

デジタル式コントロールシステムは、航空機の重量を軽減するというメリットがあり、エアバスやボーイングなどの大型機やダッソー社のファルコム 7X(価格5千万ドル)などにはすでに採用されており、ビジネスジェットクラスでも採用しているものもありますが、デジタル化は部分的であり、レガシー500のように全面的に導入しているものはありません。

レガシー500の操縦席 ステイックが正副パイロット席の両横にある
regacy500-03.jpg


これだけを見ただけでも、レガシー500がいかに先端を行っているかがわかるというものです。
エンブラエルが11月27日に実施したファーストフライトにこぎつけるまでには、2年間にわたってアイロンバード(*1)を使用して2,500時間におよぶテストを行っています。
8人~10人の乗客を乗せてひとっ飛びに無給油で5500Kmを時速1100Kmの巡航速度で飛ぶことのできるレガシー500は、今後増々さかんになると予想される企業のグロバール・ビジネスに貢献すると考えられます。米国のリサーチ会社の調査では、ビジネスジェットをビジネスに利用する企業の利益は利用しない企業よりも大きいとの結果が出ていることから見ても、“時は金なり”という至言の重さは今後さらに重くなることでしょう。
(*1) アイアンバード=航空機の骨格を鉄材で組立て、実機と同じ搭載システム機器&ソフトウェアをフライトデッキ、コンピュータと組み合わせたもの。アイアンバードでは主に操縦系統の機能試験を行う。


ビジネスジェット・ブーム

 

ビジネスジェットとは、ハリウッド映画でよく出てくるプライベートジェットのことすが、決してリッチマン専用の贅沢品ではなく、世界中の経営者、ビジネスマンが日々のビジネスで当たり前に使っています。
世界中では、3万2千機以上(*2)(ターボプロップ機約1万3千機を含む)のビジネスジェットが商談に、または優雅に週末をリゾート地で過ごすため(?)に世界の空を飛び交っています。
ビジネスジェットの機数は、LCC(格安航空)も含めた旅客機(ターボプロップ機約4千機を含め、2万1千機ほど)の1.5倍という驚くべき増加を示しています。また年間の増加数も1千機以上で、これまた旅客機をしのいでいます。
各国別にビジネスジェットの保有機数(2009年12月時点)を見てみると、米国が2万機とダントツに多く、次いでカナダとブラジルが約1000機とつづきます。(*2) 2010年のデーター


イギリスのビジネスジェット専用空港ファンボーロ
ファンボローAirport


レガシー500の豪華なキャビン
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ファーストフライトを終えたレガシー500
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エンブラエル170/190シリーズ

エンブラエルは小型旅客機の生産でも三位を大きく引き離して独走状態みたいな感じです。たとえば、同社のE170/190シリーズは、2004年3月より運航されている最新小型ジェット旅客機(1機約35億円)で、2008年6月末時点で1,674機(オプション827機含む)を受注し、すでに約410機が世界中で運航されているベストセラー機種となっています。 同シリーズは、小型ながら乗客1人当たりの客室スペースと貨物スペースは、ボーイング737型機以上(客室スペースで4%、貨物スペースで32%アップ)で、航続距離も4,445kmと長く、日本−マニラ間など近距離アジア路線などにも投入できます。
また、ライバル他社と違って、70~90席クラスの機種(E170シリーズ)だけでなく、90~120席クラスの機種(E190シリーズ)をファミリー機種としてラインナップに加え、世界の航空会社の幅広いニーズにフレキシブルに対応できることもベストセラー機種となっている大きな要因であると言えましょう。


ブリティッシュ航空もE170を中距離路線に使っている
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ボーイング737より広い客室スペースをもつE170
E170-.jpg


小・中型ビジネスジェット機の需要拡大の最大の要因は、運用コスト、とくに燃費が安いからです。旅客一人あたりの運送コストは、ジャンボジェット機の方が低いのですが、それはあくまで満席だった場合の計算です。ジャンボ機は中型以下の機体に比べ、空席率が高くなる傾向が強いので、実際の一人当たりの運送コストは中型機の方が優位となるのです。


そして航空機製造というのは(安全性の面から)あらゆる輸送手段の中でも最も技術的に高度で、経験と技術の蓄積が極めて重要とされる産業です。日本では戦前、世界的に見ても非常に高度な航空機開発の技術がありました。しかし、第二次大戦後しばらく、連合国軍の指令で日本では航空機開発がストップされていました。日本では、その間の経験値成長がそっくり抜け落ち、ボーイングやエンブラエルなどに比べて10年分は「時代遅れ」になったとも言われています。


三菱が開発したリージョナルジェット MRJ(運用開始は2014年予定)
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ホンダのビジネスジェット
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そのため、日本が今から航空機開発に乗り出しても、ボーイングやエンブラエルらに追いつくことは難しいと考えられています。航空機産業は、莫大な資本と、技術の積み重ねが必要で、最も新規参入が困難な業界なのです。

そのような困難な状況の中でも日本の航空業界は頑張っていますが、三菱が2008年から開発をスタートしたMRJ(70席~90席)は、2013年にファーストフライトの予定ですが、現在時点でのMRJの発注数はわずか170機(オプション60機)のみと低迷しています。


ゆえに、エンブラエルは今後もブラジル国内だけでなく、世界中の航空機需要増大の恩恵を受け、高い成長を続けると予想されます。


日本の川崎重工業も開発に参加(主翼部分)したエンブラエルE170
E170-0.jpg


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エンブラエルの軍用機

また、エンブラエルは、民間機だけでなく、軍用機分野でもニッチ市場を狙ったヒット商品を送り出しています。
これら対地支援機や練習機、哨戒機は米国、英国やフランスなどのほか、アフリカ諸国や南米諸国向けにも販売されています。

エンブラエルAMX(攻撃機)
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スーパーツカノ(対地攻撃機)
embraer-super-tucano.jpg



シャヴァンテ(練習機・攻撃機)
xabante.jpg



対潜哨戒機 EMB145
145.jpg



早期哨戒機 EMB145
EMB 145 AEWC



参考サイト:

Embraer公式サイト
ビジネス航空の現状と課題
新時代を迎える日伯経済関係
BRICs辞典















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