建設界の巨匠 オスカー・ニーマイヤー Part 2 [人物]
ニエマイヤーの偉業、今回は住宅編からです。(前回の記事はこちらから)
住宅の設計
ニエマイヤーはミナス州知事の依頼に応えて、ほかにもベロオリゾンテ市の州立図書館や学校の設計もします。
そして、この時期にニエマイヤーは多くの住宅の設計も手がけています。
彼の父親が週末をすごすために農園にあった鶏小屋の基礎を利用して別荘(“プルデンテ・デ・モラエスの家”)を建築。元の鶏小屋がどんなものだったかわかりませんが、鶏小屋とは似ても似つかない(?)立派な別荘です。
しかし、これらの住宅設計の中でもやはり注目に値するのは、ニエマイヤーが彼自身のために設計した家のものでしょう。傾斜地を利用して建てられたこの家は、海を眺望できる場所にあり、一階はガラス張りでカーブのある屋根を細い鉄柱で支えた構造になっており、寝室などの部屋は階下となっています。
1950年代の半ばには、ニエマイヤーは、モントリオールビル、トリアングルビル、エッフェルビルなどの設計をしています。
首都ブラジリア
ニエマイヤ-の生涯の仕事の中で、もっとも注目される“重要”なライフワークが首都ブラジリアの設計でしょう。
彼のの才能に注目したジュセリーノ・クビチェック大統領は、1955年に「50年の進歩を5年で!」をスローガンに大統領選に出馬し当選すると、ニエマイヤーを招聘して『新首都ブラジリア』の建設計画を一任します。 ニエマイヤーは「新都市計画」のデザインを公募し、当選したのはニエマイヤーが建築技師として最初に勤めた設計事務所のオーナー、ルシオ・コスタ氏のものでした。
結局、新首都の建築群のデザインはニエマイヤーが行うことになり、コスタは都市全体のデザインを担当することになりました。 建設は、クビチェック大統領の任期である5年以内に間に合うよう急ピッチで進められわずか41ヶ月間で完成しています。
お椀を二つならべたような特徴的なデザインの国会
三権広場
大統領官邸 プラナルト宮
ブラジリア軍司令部
ブラジリア夜景
国外への亡命
1964年3月、カステロ・ブランコ将軍に率いられたブラジル軍部は、クーデーターを起こし、左派傾向にあったジョン・ゴラール大統領を失脚させ軍部による独裁政権が誕生。 軍部の左派インテリ階級への迫害を恐れ、多くのブラジル人が国外逃亡し、この時、共産党員であったニエマイヤーもフランスに逃亡し、長い亡命生活が始まることになる。
パリに設計事務所を構え、設計家としての活動を始めたニエマイヤーに、フランス、イタリア、アルジェリアなどから設計の依頼が次々に来た。ニエマイヤーはすでに世界有数の設計家となっていたのです。
レ・ハヴレ文化センター
前回も少しふらましたが、この時期、ニエマイヤーはフランス共産党本部ビルの設計をしています(1966年)。ニエマイヤーは1945年に共産党に入党。共産党員として活発な活動を行って来ており、フランス亡命中にもソ連を訪問し、共産党要人と会見したり、レーニン賞まで授賞しています。ほかにも、キューバーのカストロ首相と数度にわたって会ったりしています。
ずっと後、1992年には、ブラジル共産党の党首にまでなっていますから、ニエマイヤーは根っからの共産主義者であったことがわかります。
メントウリコンスタンチネ大学
亡命からの帰国
1980年台初頭、軍による独裁政権もようやく終焉を迎えつつあり、ふたたび民主主義がもどったのを見て、国外亡命していた多くのブラジル知識人や共産・社会主義者が帰国します。その中にはニエマイヤーも含まれていました。
帰国後、ニエマイヤーは、同じく亡命先から帰国しリオデジャネイロ州知事選に当選し州知事となったレオネル・ブリゾーラの依頼で、公立教育統合センター(CIEPs)と呼ばれた州立校の設計、およびカーニバルパレードで有名なリオのサンボードロモを設計します。
リオデジャネイロ州に500校が建設された総合教育モデル校
カーニバルパレードで有名なリオのサンボードロモ
サンボードロモで毎年開催される、カーニバルパレード
ほかにも、JKメモリアル、マンシェッチ出版・TV局社ビル、ラテンアメリカ・メモリアルなどの設計もtめがけています。
マンシェッチ社(出版・TV放送局)ビル
ラテンアメリカ・メモリアルは教育学者、人類学者として多大な貢献をしたダルシ・リベイロの資料をそろえている
1990年台になると、“UFO”(空飛ぶ円盤)のニックネームで有名な現代美術館-MAC(ニテロイ市)を設計。
ニテロイ市の現代美術館は“空飛ぶ円盤”の異名がある
ニテロイ市には、ニエマイヤーの設計でポピュラーシアターも建設されています。
ニエマイヤーの創作意欲は2000年代になっても少しも衰えず、パラナ州のクリチバ市に建設されたニエマイヤー博物館の設計や英国ロンドンのハイドパークにセルペンチネ・ギャレリーの設計などを手がけています。
この年にはブラジリアにニエマイヤーの設計後50年経ってから、ようやく国立図書館と国立博物館が完成します。
国立博物館
百歳の誕生の年には、スペインに自分の名前が付けられることになった文化センターを設計。
ミナス州知事の依頼によって設計された、ミナス州オフィスビル(2010年完成)
州知事公邸 パラーシオパラーシオ・チラデンテス(2010年完成)
タンクレード・ネーヴェス国際空港
タンクレード・ネーヴェス国際空港
“直角が私を魅了するのではない。
人間によって創られた直線でもなければ、
硬い、柔軟性のないものでもない。
私を魅了するのは、自由で官能的な曲線。
私の母国の山々やが織りなすような曲線、
曲って流れる河川のさま、海の波
そして愛しい女性の柔らかな体なのだ。
宇宙そのものも曲線で出来ている。
アインシュタインが“湾曲した宇宙”
といったように
Não é o ângulo reto que me atrai,
nem a linha reta, dura, inflexível, criada pelo homem.
O que me atrai é a curva livre e sensual,
a curva que encontro nas montanhas do meu país,
no curso sinuoso dos seus rios, nas ondas do mar,
no corpo da mulher preferida.
De curvas é feito todo o universo,
o universo curvo de Einstein.
参考サイト:
Oscar Niemeyer ポピュラーシアター(リオデジャネイロ)
ブラジリアのカテドラル
Oscar Niemeyer – architecture photography
世界的な建築家、ニーマイヤー氏死去
「自由で官能的な曲線」
彼の作品の数々を見せて頂き、その言葉の意味が分かったような気がします。素晴らしいですね^^
by カリメロ (2013-02-25 22:05)
カリメロさん、ご訪問&コメント、有難うございます。
まさしく百年に一度しか現れない、建築の天才だと思います。
by Loby-M (2013-02-25 22:46)
ご訪問いただいたので早速やってきたのですが、
これは素晴らしいです。ブログというよりデータベースですね。
建築に関して私は全然知りませんが、大変勉強になります。
遡って他の記事も読ませていただきます。
by lequiche (2013-04-14 03:41)
本当、曲線の使い方が美しい。
近未来的なデザインが多いんですねえ。
by moumou (2013-04-14 07:36)
読み応えがありましたね。
曲線美を堪能させていただきました。
by チングルマ (2013-04-14 07:37)
ブラジリアの国会議事堂は、昔社会教科書に写真がのってましたね。
鉄やコンクリートで自由に曲線を画き、重さを感じさせないデザインが多いように思いました。
モニュメントや銅像は確かにソビエト的な面がありますね。また同じラテンけいということかガウディーにも通じるように感じます。
by ackylacky (2013-04-14 08:11)
こんにちは。
斬新なデザインが目を惹きますね。
曲線の使い方がとても綺麗で柔らかな印象を受けます。
by kuwachan (2013-04-16 12:43)
鶏小屋を改装した別荘私も欲しいな~(≧∇≦)w
by つなみ (2013-04-22 16:45)